初夏の優しい日を反射して、きらきらと輝く水面を、パンアップしながらズームバックしていくと海上に浮かぶ巨大な構造物が現れる・・・
これは、私が撮影助手として、まだ駆け出しの頃、初めて現場でキャメラを回した時のカットで、その時のキャメラがARRIFREX 16STである。
当時駆け出しの助手がキャメラを回すなんて100年早いと言われた時代の事、現場の事情で急遽回さなければならなかった時、心臓はバクバクでズームリングを回す手もブルブルだった。 フィルムキャメラを1カット回すのはそれだけの緊張感があった。
ARRIFREX 16ST 私はこのキャメラが大好きである・・・
アルミダイキャストの重厚でコンパクトなボディ、手持ち用のグリップまでもが鋳型で形成されていて、そのフォルムが美しい。また特徴的なのはマウントがターレット式で単玉3本を装着するとさらにかっこいい。とにかくタフで美しいキャメラだ・・・
しかし時代と共にキャメラも変化し、フィルムキャメラもほぼ姿を消してしまった。
大先輩のキャメラマンが引退する時「たまには外の風に当ててやってくれ」という言葉を思い出し、奥底にしまわれていたジュラケからSTを取り出した。
その先輩は、現場のない日もよく取り出して整備していて、機材の取り扱い、大切さを本当によく教えてもらった。
今日は久しぶりにピカピカに磨きあげた。
「俺たちはこのキャメラに飯を喰わして貰ってるんだから」
その先輩の口癖を思い出しながら・・・
豊作
青春期をフィルムとともに駆けぬけたその経験を、思い出とともに生かすとき。
初心忘るべからず、ですね。
コメありがとうございます。
今になって先輩達の言っていた言葉が身にしみて解る事がよくありますよね…